CIA暗号彫刻Kryptos最後の謎、約1.4億円で落札|35年未解読K4の解答が競売に

CIA暗号彫刻Kryptos最後の謎、約1.4億円で落札|35年未解読K4の解答が競売に

目次

CIAの謎の彫刻「Kryptos」の最後の暗号、ついにオークションで解答が売られる

35年間、世界中の暗号解読者を退けてきたCIA本部の彫刻「Kryptos(クリプトス)」。その未解読部分「K4」の解答を含むアーカイブが、2025年11月20日のオークションで、予想の倍近い96万2500ドル(約1.4億円)で落札されました。制作者のジム・サンボーン氏(79歳)が、35年間ひとりで守り続けた秘密を、匿名の新しい「守護者」へと託した瞬間でした。

Kryptosとは?35年間解かれない世界最高峰の暗号アート

1990年11月3日にCIA本部ラングレーの中庭に設置されたKryptosは、高さ12フィート(約3.7メートル)、幅20フィート(約6メートル)の巨大な銅製彫刻です。S字に湾曲した銅のスクリーンには、1,735文字の暗号文が手作業でカットされており、4つの異なる暗号化システムで構成されています。

アーティストと暗号学者の秘密のコラボレーション

サンボーン氏は、元CIA暗号センター主任のエドワード・シャイト氏と「秘密の場所で会って」この暗号システムを開発しました。シャイト氏は難易度を10段階中9とし、当初は5〜10年で解読されることを想定していました。しかし現実には、その予想を大きく上回る持続性を見せています。

解読済みの3つのメッセージが語る深遠なテーマ

これまでに解読された3つのメッセージは、いずれも深い意味を持っています。第1のメッセージ「K1」には「微妙な陰影と光の不在の間に錯覚の細かい違いがある」という詩的な文章があり、「錯覚(illusion)」が意図的に「iqlusion」と誤記されています。第2のメッセージ「K2」では「ラングレーはこのことを知っているか?知っているべきだ:それはどこかに埋まっている。正確な場所を知っているのは誰か?WWだけだ」とあり、WWは当時のCIA長官ウィリアム・ウェブスターの頭文字を指しています。

第3のメッセージ「K3」は、考古学者ハワード・カーターによるツタンカーメンの墓の発見記録を改変したもので、「ゆっくりと、絶望的にゆっくりと、入口の下部を塞いでいた瓦礫の残骸が取り除かれた。震える手で、左上角に小さな穴を開けた」という内容です。これらのメッセージは全て、秘密の発見と暴露というテーマで貫かれています。

アーティストの決断:「もうK4を維持する力がない」

今回のオークション決定について、サンボーン氏は公開書簡で「35年間、K4セクションへの公共アクセスを維持するという個人的指針に従ってきましたが、これには途方もない努力が必要でした。最近はその負担が加速しており、世界中の潜在的暗号解読者から文字通り数万通のメールと手紙を受け取っています」と説明しています。

特に近年は、ChatGPTなどのAIを使った「意味のない」解読結果が大量に送られてくることが、彼の決断を後押ししたと言います。サンボーン氏は推測に対する返答料として50ドルを徴収するようになり、年間約4万ドルの収入を得ていましたが、「もはやK4コードの97文字を維持するための物理的、精神的、財政的リソースがない」と率直に語っています。

予想を覆した落札額と、直前の「発見」

RRオークション社の競売は、当初K4の解答だけを対象に、落札予想額を30万〜50万ドルと見積もっていました。ところが2025年11月20日、匿名の入札者が96万2500ドル(約1.4億円)で競り落とし、予想の上限をほぼ倍に押し上げます。落札物には、K4の手書き平文、シャイト氏の署名入り書簡、1988年にCIAへ提出された12×18インチの銅製マケット、暗号化チャートの写しなどが含まれます。落札額の一部は障害者支援プログラムに寄付されます。

この競売には、直前の思わぬ展開もありました。2025年9月、2人の独立研究者がスミソニアン協会のアメリカ美術アーカイブでサンボーン氏の資料を調べるうちに、K4の平文そのものを見つけてしまったのです。暗号を「解いた」のではなく、答えを「掘り当てた」かたちでした。連絡を受けたサンボーン氏はすぐにスミソニアンへ依頼し、資料を50年間封印します。研究者たちは平文を公表しない意向を示しました。「彼らは発見しただけで、解読したわけではない。鍵も方法も持っていない」とサンボーン氏は語っています。

RRオークション社の副社長ボビー・リビングストン氏は、落札者が「秘密の暴露者ではなく、守護者になること」を望むと語っていました。匿名の新しい所有者は、K4の秘密を守り続けると表明しています。

解けない謎が、35年も人を惹きつけた理由

Kryptosが特別だったのは、鑑賞者を「眺める人」から「解こうとする人」へ変えた点にあります。壁の前に立ち、暗号と格闘し、何万通ものメールをサンボーン氏に送りつける――完成した1990年の時点で、これほど能動的に人を巻き込む彫刻はほとんどありませんでした。芸術家と暗号学者が組んで一つの作品をつくるという発想も、のちのメディアアートを先取りしていました。

しかもこの謎は、一枚岩ではありません。サンボーン氏は、K4の先に「K5」と呼ぶさらなる層があると示唆してきました。石化した木材や花崗岩など、彫刻の別の要素と組み合わせて初めて全体像に届く仕掛けです。今回競売にかけられたのも、K4の答え一つではなく、この構造ごとを引き継ぐアーカイブでした。

AIには掘り当てられなかったもの

近年はChatGPTなどを使った解読の試みが急増し、サンボーン氏のもとには意味をなさない「解答」が大量に届くようになりました。氏はそれらを「かなりばかげている」と切り捨てます。皮肉なのは、35年の沈黙に穴を開けたのがAIではなく、古い紙の資料を根気よく調べた二人の人間だったことです。答えは、演算ではなく書庫の奥から出てきました。

解答が売られても、Kryptosの謎は終わりません。平文がいつか表に出たとしても、それをどう組み立て、K5とどうつながるのかを知るのは、サンボーン氏から直接説明を受ける新しい所有者だけです。35年守られてきた秘密は、いま静かに次の守護者の手へ移りました。

Q&A

Q. Kryptosの暗号はなぜこれほど長期間解かれずにいるのですか?
A. K4は97文字という短い文字数でありながら、従来の暗号解読手法では解けない独特の暗号化システムが使われているためです。元CIA暗号センター主任のエドワード・シャイト氏が設計したこの暗号は、意図的に「方法論の変更」が組み込まれており、前の3つのセクションとは異なるアプローチが必要とされています。
Q. オークションで解答を購入した人は、必ず答えを公開するのでしょうか?
A. いいえ。サンボーン氏とRRオークション社は、購入者が「秘密の守護者」となり、答えを秘匿し続けることを希望しています。購入者が答えを公開するかどうかは完全に彼らの判断に委ねられており、法的な制約はありません。
Q. K4が解読されたら、Kryptosの謎は完全に終わるのですか?
A. サンボーン氏は「K4が解読されても、その謎はK5として続く」と述べており、彫刻の他の要素(石化した木材、花崗岩のスラブなど)を含む、より大きなパズルが存在することを示唆しています。つまり、K4の解読は終わりではなく、新たな段階の始まりかもしれません。
Q. AIは本当にKryptosの解読に役立たないのでしょうか?
A. 現時点では、ChatGPTなどのAIツールによる解読試行はすべて失敗しており、サンボーン氏は「AIが生成した解読結果はかなりばかげている」と評価しています。真の暗号解読には、コンテキストの理解、直感、そして人間の洞察力が不可欠であり、現在のAI技術ではこれらを十分に再現できていないようです。
Q. 今回のオークションは暗号アートやデザイン業界にどのような影響を与えると考えられますか?
A. Kryptosのオークションは、アート作品の価値が物理的な存在だけでなく、知的体験や長期間の関心維持といった無形の要素からも生まれることを実証しています。これにより、デザイナーやアーティストは「発見可能な要素」「隠された情報」「段階的に明かされる謎」といった手法を取り入れた、よりインタラクティブで持続的な魅力を持つ作品を創造する動機を得るでしょう。

参考文献

Nobody Has Been Able to Solve the CIA’s Famous ‘Kryptos’ Sculpture. Soon the Solution Will Be Sold to the Highest Bidder
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/nobody-has-been-able-to-solve-the-cias-famous-kryptos-sculpture-soon-the-solution-will-be-sold-to-the-highest-bidder-180987200/
The Kryptos Key Is Going Up for Sale
https://www.wired.com/story/jim-sanborn-auctions-kryptos-key/
Want to Crack the CIA’s Infamous ‘Kryptos’ Puzzle? Its Secret Key Is Up for Sale
https://news.artnet.com/art-world/cia-kryptos-sculpture-code-auction-2677451
A Solution to the C.I.A.’s ‘Kryptos’ Sculpture Goes Up for Auction
https://www.nytimes.com/2025/08/14/science/kryptos-sculpture-cia-solution-auction.html
Answer To 30-Year-Old Mystery Code Embedded In The Kryptos CIA Sculpture To Be Sold At Auction
https://www.iflscience.com/answer-to-30-year-old-mystery-code-embedded-in-the-kryptos-cia-sculpture-to-be-sold-at-auction-80485
Kryptos – Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Kryptos
Code of ‘Kryptos,’ CIA sculpture unsolved for 35 years, is going up for auction
https://www.washingtonpost.com/entertainment/art/2025/08/14/kryptos-code-k4-solution-jim-sanborn-auction/

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