タイポグラフィ史は、文字の形をどうつくり、紙面や画面にどう並べて読ませてきたかをたどる、書体と組版の歴史である。活字の設計だけでなく、標識やロゴ、薬のラベルなど、文字が社会の中で果たしてきた役割まで含む。
15世紀半ばにグーテンベルクが活版印刷を実用化してから、活字は長く金属の塊だった。19世紀には広告のための太く大きな書体が次々に生まれ、20世紀に入ると、未来派やロシア構成主義の詩人とデザイナーが文字を絵のように紙面へ散らし、文字は読むための記号でしかないという前提を壊していく。戦後はヘルベチカに代表される中立的なサンセリフ体が標識や企業ロゴを覆い、写植からデジタルフォントへと道具が変わるたびに、文字の形も組み方も変わってきた。
日本語の文字も同じ流れの中にある。明朝体やゴシック体は金属活字から写植、デジタルフォントへと姿を移し、漢字と仮名と欧文を一つの紙面に組み合わせる難しさは、いまも和文の組版の大きな課題であり続けている。
このタグには、一つの書体の誕生を追う記事から、記号ひとつの来歴、道路標識や薬の名前のように読み違いが事故につながる場面での文字の設計まで、時代も分野も異なる記事を集めている。
文字が読むものであることをやめた瞬間は文字が「読むもの」をやめた日で、世界標準になった書体はヘルベチカ(Helvetica)で取り上げた。テムズ川に沈んだ書体は活字をめぐる確執の物語で、書体が首相を倒した日は書体が証拠になった事件を追っている。