用語解説

顔料

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顔料(がんりょう、pigment)は、水や油に溶けない色の粉で、ほかの材料と混ぜたり表面に定着させたりして色をつける物質である。溶けて繊維などに染み込む染料とは、この溶けるか溶けないかで区別される。

顔料だけでは画面に付かないため、絵具は顔料と、粒子をつなぎとめる展色剤(メディウム)からできている。乾性油で練れば油絵具、アラビアゴムなら水彩絵具、卵ならテンペラになり、日本画では膠(にかわ)で岩絵具を画面に定着させる。同じ顔料でも、展色剤が変われば発色や質感が変わる。

人類が最初に使ったのは、土や鉱物を砕いた天然の顔料だった。洞窟壁画の赤や黄は酸化鉄を含む土で、黒は炭である。青は長いあいだ希少な色で、アフガニスタン産のラピスラズリから採るウルトラマリンはきわめて高価だったため、聖母マリアの衣のような特別な部分に使われた。その数千年前に例外をつくったのが古代エジプトのエジプシャン・ブルーで、砂と銅と石灰を焼いてつくる、知られている最古の合成顔料とされる。

近代の顔料の歴史は、化学の歴史と重なる。18世紀初めのベルリンでプルシアンブルーが偶然生まれ、1826年にはフランスのジャン=バティスト・ギメが人工のウルトラマリンを製造する方法を確立した。19世紀にはクロムやカドミウムを使った鮮やかな黄や赤が加わり、1841年にアメリカの画家ジョン・ゴフ・ランドが金属製の絵具チューブを考案すると、練った絵具を屋外へ持ち出せるようになる。印象派の戸外制作は、この新しい色と道具に支えられていたとされる。

新しい顔料は国境も越えた。葛飾北斎の《冨嶽三十六景》の青には、海を渡ってきたプルシアンブルーが使われている。顔料の開発はいまも続いていて、2009年にはアメリカ・オレゴン州立大学の研究室で、新しい青色顔料YInMnブルーが偶然見つかった。

最古の合成顔料の物語はエジプシャン・ブルーとは?で詳しく書いた。蜜蝋に顔料を溶かして描く古代の技法がよみがえった例はジャスパー・ジョーンズの星条旗と数字に、どの絵具にも存在しない色をめぐる話はoloの記事にある。