用語解説

ミニマリズム

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ミニマリズム(Minimalism)は、1960年代のアメリカで興った美術の動向ミニマル・アートを核に、表現の要素を最小限まで削り込み、形と素材そのものを見せようとする造形の考え方を指す言葉である。美術の文脈ではミニマル・アートとも呼ばれる。

美術の運動としての始まりは、1959年にニューヨーク近代美術館で展示されたフランク・ステラの黒い縞の絵画に置かれることが多い。抽象表現主義の激しい筆づかいから離れ、絵は何かを表すものではなく、目の前にある物そのものだという立場がここで打ち出された。60年代にはドナルド・ジャッド、カール・アンドレ、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィットらがこれを立体へ押し広げる。

特徴は、工業製品の素材と作家の手の消去にある。ジャッドはアルミニウムやアクリル板の箱を工場に発注して壁に等間隔で並べ、アンドレは煉瓦や金属板を床に敷き、フレイヴィンは市販の蛍光灯をそのまま作品にした。同じ単位を繰り返し、台座を使わないことも多く、作品が置かれた空間と見る人の身体の関係を問う。1965年、哲学者リチャード・ウォルハイムの論文がミニマル・アートの名を与え、翌年ニューヨークのユダヤ博物館で開かれた「プライマリー・ストラクチャーズ」展で広く知られるようになった。

源流のひとつはロシアの前衛である。ジャッドはマレーヴィチとその周辺について文章を書き、フレイヴィンはタトリンに捧げる蛍光灯の連作をつくっている。

デザインや建築では、もっと広い意味で使われる。装飾を削って素材と構造を見せる態度は、19世紀後半の無装飾の家具からモダニズム建築、打ち放しコンクリートの教会、装飾を捨てた香水瓶まで、時代を変えて何度も現れてきた。日本の侘び寂びや簡素な空間と重ねて語られることも多い。

装飾を捨てていく100年の流れは引き算のデザイン史で、その源流にある絵画はマレーヴィチ「黒い正方形」とは何かで取り上げた。建築とプロダクトの例は安藤忠雄「光の教会」とシャネルNo.5ボトルで読める。