キネティックアート(kinetic art)は、モーターや風、観客の手などによって作品が実際に動くこと、あるいは動いて見えることを表現の中心に置く美術である。キネティック・アート、動く美術とも呼ばれる。
美術に本物の動きを持ち込んだ早い例として、1913年にマルセル・デュシャンがスツールに自転車の車輪を取り付けた作品がよく挙げられる。1919年から20年にかけては、モスクワでナウム・ガボが、モーターで金属の棒を振動させて目には見えない立体を浮かび上がらせる作品を作った。1920年にガボと兄アントワーヌ・ペヴスナーが発表した『リアリズム宣言』は、動きのリズムを芸術の要素として掲げている。
1930年代にはアレクサンダー・カルダーが、針金と金属板を吊るして空気の流れで揺れる彫刻を作り、デュシャンがそれをモビールと名づけた。1955年、パリのドゥニーズ・ルネ画廊で開かれた展覧会「動き(Le Mouvement)」には、カルダーやデュシャンに加え、ジャン・ティンゲリー、ヤーコフ・アガム、ヘスス・ラファエル・ソト、ヴィクトル・ヴァザルリらが並び、運動としての輪郭が定まる。
方向は大きく二つある。モーターや歯車で物理的に動かす方向と、目の錯覚によって静止した画面が動いて見える方向で、後者は1960年代のオプ・アートにつながった。ティンゲリーは、がらくたを組み合わせた機械をわざと不器用に動かし、1960年にはニューヨーク近代美術館の中庭で装置を自壊させて、効率を求める機械文明そのものを笑ってみせた。
現在では、プログラムで制御された照明や可動部をもつインスタレーション、メディアアートに、その系譜が流れ込んでいる。
ティンゲリーの自壊する機械から日本の不便益までをつないだのが反オートメーションの機械たちである。MITの三角ジッパーで作った開く花はY-Zipper誕生で、フランス・ナントの巨大な機械生物はLA MACHINE ラ・マシンで紹介した。