用語解説

異化技法

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異化技法は、見慣れたものを見慣れない形で示し、受け手の知覚を習慣から引き離して、対象を新たに感じさせる表現の手法である。ロシア語のオストラネーニエ(ostranenie)の訳語で、単に異化とも呼ばれる。

提唱したのは、ロシア・フォルマリズムの文学理論家ヴィクトル・シクロフスキーである。1917年の論文「手法としての芸術」で彼は、人は慣れたものを認識するだけで、もはや見てはいないと論じた。芸術の役割は、ものを見慣れないものにして知覚に手間をかけさせ、対象の手触りを取り戻させることにある。例に挙げたのは、馬の目から人間社会を描いたトルストイの短編「ホルストメール」だった。

この考え方は文学の外へ広がった。ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトは1930年代、観客が物語に没入せず、舞台上の出来事を距離を置いて批判的に見られるようにする異化効果を演劇の方法とした。この語はシクロフスキーの用語を訳したものとする見方もある。ただし、感覚の新鮮さを取り戻すことを目指したシクロフスキーに対し、ブレヒトの異化は観客に批判的な思考を促す政治的な方法だった。写真では、同じロシアのアレクサンドル・ロトチェンコが、建物を真下から見上げ、画面を斜めに傾けて撮ることで、見慣れた街を見知らぬ形に変えた。

美術や映像では、天地の反転、極端な拡大や切り取り、場違いな組み合わせ、明るすぎる光の下で起きる不穏な出来事などが、異化の手つきとして使われる。ルネ・マグリットが昼の空の下に夜の街並みを描いた《光の帝国》も、その一例として読める。いまの広告やミュージックビデオで多用される斜めの構図や大胆なトリミングにも、同じ仕掛けが受け継がれている。

ロトチェンコの斜めの構図とトリミングをシクロフスキーの異化から読み直したのがロトチェンコのカメラで、映画『ミッドサマー』と版画家・元田久治の廃墟の東京を、異化の四つの手つきで比べたのが『ミッドサマー』と元田久治である。