サイケデリック(psychedelic)は、幻覚剤による知覚の変容や、それに着想を得た表現を指す言葉で、デザインの分野では1960年代後半に流行した、蛍光色とうねる曲線、溶けるような文字を特徴とする様式を指す。略してサイケとも呼ばれる。
語は1950年代半ば、幻覚剤を研究していた精神科医ハンフリー・オズモンドが、作家オルダス・ハクスリーとの書簡のやりとりの中で、ギリシャ語の「魂」と「現れる」を組み合わせて作った。それまでの病的な響きの呼び名に代えて、心のはたらきを明らかにするものという意味を込めたとされる。
視覚の様式として形をとったのは、1966年から67年にかけてのサンフランシスコである。興行主ビル・グレアムのフィルモア・オーディトリアムなどのために、ウェス・ウィルソン、ヴィクター・モスコソ、リック・グリフィン、スタンリー・マウスとアルトン・ケリーらが、ロック・コンサートのポスターを次々に刷った。読めないほど歪めた手描き文字、補色をぶつけて画面を震わせる配色、隙間なく埋めた装飾。ウィルソンの文字はアール・ヌーヴォーやウィーン分離派のポスターを下敷きにしており、イェール大学でヨゼフ・アルバースに色彩を学んだモスコソは、教わった規則の逆をやることで色を振動させた。
同じころ、ロンドンやニューヨークでも、雑誌、ファッション、アニメーション映画にこの様式が広がった。1968年のビートルズの映画『イエロー・サブマリン』はその代表例である。日本では横尾忠則が、1965年ごろから神社の祭礼看板や戦前のマッチ箱に見られる放射光の図像をポスターに持ち込み、サンフランシスコとは別の道筋から近い表現にたどり着いていた。
1970年代に入ると流行は退いたが、ネオンのような色とゆがむ文字は、その後もレコードジャケットや音楽フェスのポスターで繰り返し呼び戻されている。
戦前の日本の図像から放射光のポスターを生んだ横尾忠則と、同じ時期のサンフランシスコのポスターとの符合は横尾忠則と放射光で取り上げた。