シュプレマティスム(Suprematism)は、1915年にロシアの画家カジミール・マレーヴィチが提唱した抽象絵画の運動である。白い地に正方形や円、十字、長方形といった幾何学的な図形だけを置き、現実の対象を描くことをやめた。名前は至高を意味するラテン語に由来し、シュプレマティズム、スプレマティズムとも表記される。
出発点は1915年12月、ペトログラードで開かれた「最後の未来派絵画展 0,10」である。マレーヴィチはここに39点を並べ、ロシアの家庭で聖像(イコン)を掛ける部屋の上隅に《黒い正方形》を掲げた。展覧会にあわせて出した冊子『キュビスムと未来派からシュプレマティスムへ』で、彼は自然の再現から絵画を切り離すと宣言している。
その後、作品は色の種類を増やす段階を経て、1918年ごろの《白の上の白》で、白い地に傾いた白い正方形を置くという極限にたどり着く。1919年からはヴィテブスクの美術学校で教え、学生たちと新しい芸術の肯定者を名のる集団ウノヴィス(UNOVIS)を結成した。そこに加わったエル・リシツキーは、シュプレマティスムの図形を政治ポスターや本、そして彼がプロウンと呼んだ建築的な構成へ持ち込んでいく。
意味を持たない幾何学という発想は、ロシア構成主義やバウハウスを経て、のちのミニマリズムや抽象的なグラフィックデザインへ受け継がれた。1927年には、マレーヴィチの『無対象の世界』がバウハウス叢書の一冊としてドイツで刊行されている。
《黒い正方形》が生まれた展示とその後の100年はマレーヴィチ「黒い正方形」とは何かで、リシツキーがその図形を絵本の組版へ持ち込んだ『2つの正方形の物語』は文字が「読むもの」をやめた日で書いた。