用語解説

医療安全デザイン

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医療安全デザインは、薬の取り違えや機器の操作ミスといった医療現場の事故を、使う人の注意力に頼るのではなく、ラベル、パッケージ、文字、色、形の工夫によって起こりにくくするデザインの考え方である。人間工学(ヒューマンファクターズ)の知見を医療に応用する分野と重なる。

背景には、医療事故の多くが個人の不注意ではなく、間違えやすい設計から生じるという認識がある。1999年、米国医学研究所は報告書『To Err Is Human』で、医療ミスによって米国の病院で年間4万4千人から9万8千人が亡くなっていると推計し、人は必ず間違えるという前提で仕組みを作り直すよう求めた。

対策の多くは、見分けにくいものを見分けやすくすることである。2001年に米国食品医薬品局(FDA)が始めた取り組みでは、名前の似た薬の違う部分だけを大文字にするトールマン・レタリングが推奨された。hydrOXYzineとhydrALAZINEのように並べると、目が自然に差分へ向かう。2005年には、デザイナーのデボラ・アドラーが小売チェーンのターゲットと組んで、薬名をボトルの上面に大きく示し、家族ごとに色の輪で区別する処方薬容器を世に出した。

形そのもので間違いを防ぐ方法もある。麻酔で使う注射器のラベルを薬の種類ごとに色分けする規格や、栄養剤のチューブが点滴の回路に誤ってつながらないよう、接続部の形を互いに合わないものにする国際規格がその例である。日本でも、名前の似た薬の取り違えをきっかけに、販売名そのものが変更された例がある。

こうした工夫は、病院の外にも通じる。家庭で薬を管理する高齢者や、慣れない機器を扱う介護の現場でも、読みやすい文字と取り違えにくい形は、そのまま事故の減少につながる。

似た薬名の差分だけを大文字にする手法は薬名の取り違えを防ぐ「Tall Man Lettering」とは?で、祖母の誤服用から生まれた処方薬ボトルは処方薬ボトルの革命で取り上げた。